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太宰治『ヴィヨンの妻』をスマートフォン用に電子書籍化しました。

02 2月

太宰治作第二弾『ヴィヨンの妻』です。2009年に映画化もしまして、『パンドラの匣』同様に太宰治の代表作の一つとして数え上げられている名作です。

 


 

 あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。
 夫は、隣の部屋に電気をつけ、はあっはあっ、とすさまじく荒い呼吸をしながら、机の引出しや本箱の引出しをあけて掻きまわし、何やら捜している様子でし たが、やがて、どたりと畳に腰をおろして坐ったような物音が聞えまして、あとはただ、はあっはあっという荒い呼吸ばかりで、何をしている事やら、私が寝た まま、
「おかえりなさいまし。ごはんは、おすみですか? お戸棚に、おむすびがございますけど」
 と申しますと、
「や、ありがとう」といつになく優しい返事をいたしまして、「坊やはどうです。熱は、まだありますか?」とたずねます。
 これも珍らしい事でございました。

※本文より冒頭部分を引用 

 

 

 

著者 太宰治
タイトル ヴィヨンの妻
著者紹介 生1909年(明治42年)6月19日 、没 1948年(昭和23年)6月13日 本名、津島修治(つしましゅうじ)。昭和を代表する日本の小説家。津軽の大地主の六男として生まれる。共産主義運動から脱落して遺書のつもりで書いた第一創作集のタイトルは「晩年」(昭和11年)という。この時太宰は 27歳だった。その後太平洋戦争に向う時期から戦争末期までの困難な間も、妥協を許さない創作活動を続けた数少ない作家の一人である。戦後「斜陽」(昭和 22年)は大きな反響を呼び、若い読者をひきつけた。
総ページ数 74P
カテゴリ 純文学
電子書籍作成日 2011/2/2
著作権 著作権消滅(PD) 文化庁自由利用(コピOKー、障害者OK、学校利用OK)
フォーマット PDFファイル(DRMフリー)
備考 iNovel形式。ルビあり。
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