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太宰治『人間失格』iNovel形式にて電子書籍化

04 2月

代表作ですね。太宰治作第四弾『人間失格』です。


    はしがき

 私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
 一葉は、その男の、幼年時代、とでも言うべきであろうか、十歳前後かと推定される頃の写真であって、その子供が大勢の女のひとに取りかこまれ、(それは、その子供の姉たち、妹たち、それから、従姉妹たちかと想像される)庭園の池のほとりに、荒い縞の袴をはいて立ち、首を三十度ほど左に傾け、醜く笑っている写真である。醜く? けれども、鈍い人たち(つまり、美醜などに関心を持たぬ人たち)は、面白くも何とも無いような顔をして、
「可愛い坊ちゃんですね」
 といい加減なお世辞を言っても、まんざら空お世辞に聞えないくらいの、謂わば通俗の「可愛らしさ」みたいな影もその子供の笑顔に無いわけではないのだが、しかし、いささかでも、美醜に就いての訓練を経て来たひとなら、ひとめ見てすぐ、
「なんて、いやな子供だ」
 と頗る不快そうに呟き、毛虫でも払いのける時のような手つきで、その写真をほうり投げるかも知れない。

※本文より冒頭部分を引用 

 

 

 

著者 太宰治
タイトル 人間失格
著者紹介 生1909年(明治42年)6月19日 、没 1948年(昭和23年)6月13日 本名、津島修治(つしましゅうじ)。昭和を代表する日本の小説家。津軽の大地主の六男として生まれる。共産主義運動から脱落して遺書のつもりで書いた第一創作集のタイトルは「晩年」(昭和11年)という。この時太宰は 27歳だった。その後太平洋戦争に向う時期から戦争末期までの困難な間も、妥協を許さない創作活動を続けた数少ない作家の一人である。戦後「斜陽」(昭和 22年)は大きな反響を呼び、若い読者をひきつけた。
総ページ数 251P
カテゴリ 純文学
電子書籍登録日 2011/2/4
著作権 著作権消滅(PD) 文化庁自由利用(コピOKー、障害者OK、学校利用OK)
フォーマット PDFファイル(DRMフリー)
備考 iNovel形式。ルビあり。
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